糖質を減らしすぎて逆に危ない?ハングリーダイアベイティスとは何か
「糖質を控えれば血糖値も下がるはず…」と思って、食事量を減らしたり、極端に糖質を制限したりしていませんか?
確かに糖質を減らすことは血糖コントロールに役立つこともあります。でも、実は「糖質を減らしすぎる」と、かえって血糖値が乱れることがあるのです。
このような状態は「ハングリーダイアベイティス」(ハングリー=空腹、ダイアベイティス=糖尿病)と呼ばれ、特に糖を処理する力が弱い「耐糖能(たいとうのう)異常」のある方に起こりやすいとされています。
ただし、極端な糖質制限やファスティングのあとで急に糖質を摂るような状況では、健康な方でも一時的に血糖の乱れが生じることがあります。
この記事では、「ハングリーダイアベイティス」という状態の仕組みや、日常生活で注意したいこと、さらに糖尿病検査(ブドウ糖負荷試験)を受ける前に気をつけたい食事のポイントについて、血糖値が気になるすべての方に向けて、わかりやすく解説します。
日常にも潜むハングリーダイアベイティスのリスク
「糖質を長く控えたあとに急に食べる」ことで血糖値が乱れる。この状態は特別なことではなく、私たちの何気ない食生活の中でも起こりうるのです。
たとえば、こんな場面に心当たりはありませんか?
- いつも夕食ではごはんを抜いているけれど、今日はカレーだから久しぶりにごはんをたくさん食べた
- ふだんは昼食をサラダだけにしているけど、友人に誘われてラーメンを食べた
- 朝食を抜く生活をしているけど、休日にパンケーキやパスタをどっさり食べた
- 仕事で昼食がとれなくて、夕食が夜の9時に。長時間の空腹後に一気食い
こういった「空腹のあとに急に糖質をとる」パターンは、耐糖能異常のある方(糖を処理する力が弱い方)にとっては特に、血糖値が急上昇するリスクがあります。
一見すると「普通の生活」のように見えても、血糖コントロールにとっては思わぬ落とし穴になることがあります。
ハングリーダイアベイティスって何?
「ハングリーダイアベイティス(hungry diabetes)」という言葉は、正式な医療用語ではありませんが、「糖質を減らしすぎて、体が飢餓状態になったようなときに、逆に血糖値が上がってしまう」状態を指して使われています。
たとえば、耐糖能異常のある方が自己判断でごはんやパンなどの糖質を極端にカットすると、体は「エネルギー不足」と判断して、肝臓でブドウ糖を作り出したり、血糖値を上げるホルモンが分泌されたりします。
その結果、血糖値が不安定になったり、食後に急に血糖値が上がってしまったりするのです。
また、長期間糖質を控えて脂質を主なエネルギー源としていた体に急に糖質を入れると、代謝が追いつかず、反動で血糖値が急上昇することもあります。さらに、糖質を減らした分をほかの栄養素で補わないと、エネルギーが常に不足することになり、体が省エネモードに入りやすくなる点にも注意が必要です。
ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)とは?
糖尿病の診断に使われる検査のひとつに「75グラム経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」があります。
この検査は、糖尿病の疑いがあるときや、妊娠中に行われる妊娠糖尿病の診断などにも使われます。
前日の夜から絶食し、当日の朝に病院で75gのブドウ糖が入った飲み物を飲んだあと、30分、1時間、1時間半、2時間と時間を追って血糖値を測定し、体の糖処理能力を確認するものです。

OGTT検査前に大事なこと:「糖質は150g摂っておく」
この検査では、事前に「1日150g以上の糖質を、3日以上続けて摂取しておく」ことが重要です。これは栄養素としての糖質150gであり、ごはん1日150gというわけではないのでご注意ください。
ごはんの重量100gに含まれる糖質量は約40gです。ごはんを1日3回100gずつ食べるだけでも120gの糖質量を摂取できます。さらに、おかずや果物、乳製品、調味料などからの糖質も加われば、自然と150gの糖質量に達します。
普段どおりの食事を心がけることが、検査時に体が適切に反応するための準備になります。糖質を制限しすぎたり、直前に極端な食事をすると、実際には問題がないのに検査結果にズレが出てしまい、正確な判断が難しくなることがあります。
妊娠中の検査は特に注意
特に妊娠中の検査では注意が必要です。つわりで糖質がとれない状態が続いたまま検査を受けると、OGTTの結果が実際より高く出ることがあります。どうしてもつわりなどで数日間ほとんど食べられない場合は、必ず医師に伝えるようにしましょう。
この検査前の糖質摂取量については、日本糖尿病学会のガイドラインにも記載されています。
「糖質を150 g 以上含む食事を 3 日以上摂取したのち,10〜14 時間の絶食後,早朝空腹時に 75 g ブドウ糖を含む225〜350 mL の溶液を服用させる。」 (出典:日本糖尿病学会)
なお、これらはガイドラインに基づく目安であり、実際には検査を受ける病院ごとに指示が異なる場合もあります。検査前には、医療機関の指示をよく確認し、必ず医師や医療機関の指示に従ってください。

OGTT検査前に避けるべきこと
- 糖質をほとんどとっていない状態での検査
- ファスティングや極端なダイエット直後の検査
こうした状態では、体の糖を処理する機能が正しく働かず、検査結果が実際より悪く出てしまう恐れがあります。
糖質は「減らす」よりも「適量をむらなく」
糖質を減らせば血糖値が下がる。これは一部は正しいですが、減らしすぎると体がうまく対応できなくなり、 かえって血糖値が乱れることがあります。
大切なのは「適量の糖質を、3食むらなくとること」。食べたり食べなかったりといった不規則な食事や、欠食(食事を抜くこと)は逆に血糖値の乱れにつながりやすいため避けたいところです。
そして「糖質を減らせばいい」と思って、主食だけを極端に減らすと、その分おかずが増えて、結果的に塩分や脂質をとりすぎてしまうこともあります。
このように、過剰に何かを制限する食事は、かえって別のバランスを崩す原因になることも多いのです。
そのため、ごはんやパンなどの主食を適量とりつつ、お肉・魚・野菜なども取り入れて、ゆっくり食べながら糖の吸収をおくらせることが、血糖値を安定させるためのひとつのポイントになります。
一人ひとり違う「ちょうどいい糖質量」
糖質を処理する力は、人それぞれ異なります。
- 食後の血糖値上昇に対してインスリンが十分に出ない方
- インスリンの分泌が遅れて、時間がたってから過剰に出てしまう方
- インスリンは出ているのに効きが悪い(インスリン抵抗性)方
このように、体の反応はさまざまで、「ただ糖質を減らすだけ」ではコントロールがうまくいかないこともあるのです。
だからこそ、一人ひとりの体質にあった「ちょうどいい糖質量」を、日々の食事や血糖変化から探っていくことが大切です。
ハングリーダイアベイティスを防ぐためのポイント
- 1日3食たべて欠食はできるだけさける
- 主食(ごはん、パンなど)のまとめ食いをさけて、3食にわけて摂る
- 玄米や雑穀米、もち麦ごはん、全粒粉パンなど質のよい糖質を選ぶ
- 食事の間隔を空けすぎないようにする
- ファスティングや自己判断の食事制限をさけ、どうしても実行したいときは専門家に相談する
まとめ
糖質をただ「減らせばいい」と思い込んでいませんか?
確かに糖質を控えることは、血糖値のコントロールに役立つ一面があります。しかし、極端な糖質制限は、体がエネルギー不足と判断してしまい、逆に血糖値が乱れたり、健康を損ねるリスクを高めてしまうこともあるのです。
特に、ブドウ糖負荷試験(OGTT)などの検査を受ける際には、事前にしっかりと糖質を摂っておくことが推奨されています。これは、検査当日に正しい評価を得るために、体を通常の代謝状態に保っておく必要があるからです。
糖質は、私たちの体を動かす大切なエネルギー源であり、脳や筋肉にとっても欠かせない栄養素です。むしろ一人一人の活動量に合わせた適量の糖質をむらなくとることが、血糖コントロールを安定させる鍵になります。
「正しく食べて、正しく知る」。これが、健康的な日常と、未来の体を守るための第一歩です。
※この記事はブドウ糖負荷試験の際の注意点をまとめたものです。通常の糖尿病治療中の血液検査(HbA1cや一般的な検査)前には当てはまりません。糖尿病治療中の方は、必ず医療機関の指示通りに検査を受けてください。
参考文献・出典
- 日本糖尿病学会 編. 『糖尿病診療ガイドライン 2019』. 南江堂.
- 一般社団法人 日本糖尿病学会. ブドウ糖負荷試験に関する指針.
- 小田原雅人 他. 『糖尿病ケアのエビデンス』. 医学書院.

